ホーザン株式会社メインロゴ

ホーザン株式会社メインロゴ

お問い合わせ よくあるご質問

ボトムブラケットのタッピング、およびフェイシング

必要な工具

ここでは、BTS-1(BBタップセット) BFS-1(BBフェイシングセット) の使用方法について解説しています。

多くのボトムブラケットシェルは内部にBBセットを装着するためのネジが切られています。
これらのネジはフレーム工場で加工されていますが、稀に使用するBBセットに対してネジの状態が不十分な場合があり、BBセットが装着できない場合があります。
また、ボトムブラケットシェルの端面について、溶接時の歪みや塗装ムラなどによる原因で、十分な精度が確保されていない場合があります。
特に近年のカートリッジ式BBセットやホローテックタイプのBBセットの場合、ボトムブラケットシェルの端面が、完全な平行になっている必要があり、それらの精度が出ていない場合、スピンドルを真っすぐに装着できず、スピンドルが偏芯して回転するばかりか、ベアリングにも悪影響を及ぼします。
そのため、クランクのスムーズな回転とベアリングの耐久性を向上させる上で、左右の端面を平行にする「フェイシング」という作業は、非常に重要な作業となります。

BTS-1 はボトムブラケットシェルのネジの修正とフェイシングを行うことができるセットです。セットには左右のハンドルと修正タップ、およびフェイシングカッターが入り組みされています。
フェイシングを行う際には、ボトムブラケットシェル内部にタップを装着し、ハンドルだけを抜き取ります。タップが抜けたハンドルにフェイシングカッターを装着し、再度ボトムブラケットシェルに装着されたタップに挿入して、手の圧力でコントロールしながらフェイシングを行うことができます。
ただし、この作業は簡易的な作業となるため、より精密なフェイシングが必要な場合は、別途BFS-1 を使用されることをお勧めします。

BFS-1 はスプリングによってフェイスカッターに一定の圧力を発生させ、より正確にフェイシングを行うことができる、フェイシング専用工具です。

BFS-1 はタッピング機能を持たないボトムブラケットシェルに装着する2つのガイドブッシングと専用ハンドル、またフェイシングカッターが入り組みされています。
BFS-1 の使用に際しては、ボトムブラケットシェルのネジが正常な状態にあることが前提となります。万一、ボトムブラケットシェルのネジが正常な状態でない場合、別途BTS-1 を使用してタッピングを行ってください。
BFS-1 に装備された、スプリングによる加圧装置は、より正確に、より短時間にフェイシング作業を行うことができます。

現在では、ボトムブラケットのネジ規格は、その多くがISO規格に準拠しています。一般的にEnglish規格と呼ばれ、日本ではJIS規格がそれに相当しますので、国内ではJISと呼ばれることの方が多いでしょう。また、ヨーロッパの規格としてイタリアン規格が唯一現存しています。
BTS-1 BFS-1 は、これら2つの規格に対応することが可能です。

参考までに、過去も含めてボトムブラケットネジの規格を下記にまとめました。

BTS-1 によるタッピングとフェイシング作業手順

下記の図は、左右のタップの拡大図になります。赤の矢印で示した場所がそれぞれのタップの先端になります。右ネジ(正ねじ)用のタップはタップの右側から始り、左ネジ(逆ネジ)用のタップはタップの左側から始まるのがお分かりいただけると思います。

作業の前に、必ずタップの方向を確認してから作業してください。

万一、逆の方向のタップを使用して作業した場合、ボトムブラケットシェルのネジは修復できません。

※画像をクリックすると拡大できます
  • 1. 作業するフレームのボトムブラケットシェル規格を確認します。
    BTS-1で作業できる規格はISO / English / JISとItalian規格になります。
  • 2. 作業するフレームに適合した正しいタップとその方向を確認します。
    ISO / English / JIS規格であるならば、ドライブ側(チェーンリング側)には左ネジ(逆ネジ)のタップが来るはずです。タップに十分な切削油を塗布します。
  • 3. ボトムブラケットシェルをはさみこむように左右のハンドルを合わせ、それぞれの方向にそれぞれ3~4回転づつタップを挿入していきます。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 4. 適宜、切削油をタップに塗布します。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 5. いずれかのタップがボトムブラケットシェルに完全に隠れるまで作業していきます。
    この時、無理に回転させず、切りくずでハンドルが重たくなりますので、1 / 2回転させて、1 / 4回転戻す程度でゆっくりとタッピング作業を行います。また、適宜切削油を塗布してください。
  • 6. 反対側のタップも同様に作業します。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 7. フェイシング作業を行う際には、ボトムブラケットシェルにタップを残し、フェイシング作業をする方のハンドルを抜き取り、抜き取ったハンドルにフェイスカッターを装着します。
  • 8. フェイシングカッターに十分な量の切削油を塗布します。
  • 9. ハンドルを元に戻し、ボトムブラケットシェルに加圧しながらハンドルを時計方向に回します。この時、ハンドルは必ず時計方向のみに回転させ、逆回転はさせないでください。また、回転の最後は徐々に力を抜くように作業すると、きれいに作業ができます。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 10. 適宜ハンドルを抜いて、フェイシングの状況を確認します。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 11. 全周に渡ってフェイシングした面が露出したら、フェイシングは終了です。
    シェル幅に関しては、大きな影響は出ませんのでフェイシングが完了するまで作業を行います。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 12. フェイシング作業終了後、適宜バリを取り除くため、フェイスカッターを優しくフェイシング面をさらいます。
  • 13. 反対側も同様に作業します。
  • 14. 作業が終了したら、フェイスカッターをハンドルから取り外し、ボトムブラケットシェルに納まっているタップを取り外します。タップを取り外す際は、必ず左右同時に取り外すようにしてください。万一片側のタップだけを先に取り外すと、反対側のタップを取り外す際に、ネジを傷つける恐れがあります。
  • 15. ブラシやウエスで切りくずを除去します。適宜パーツクリーナーなどを使用して戦場を行ってください。圧縮エアを使用して切りくずを吹き飛ばす場合は、周囲に十分注意してから行ってください。

BFS-1 によるフェイシング作業手順

BFS-1 は、ボトムブラケットシェルに取り付けられる2つのガイドブッシングを使用します。作業するボトムブラケットシェルのネジが正常な状態でない場合、別途BTS-1を使用してタッピングを行ってください。

右記の画像は、BFS-1 のガイドブッシングです。

それぞれのガイドブッシングのネジの傾斜方向に注目してください。左ネジ(逆ネジ)用ガイドブッシングはわずかに左側を上にして傾斜しており、右ネジ(正ネジ)用ガイドブッシングはわずかに右側を上にして傾斜しているのがわかります。

※画像をクリックすると拡大できます
  • 1. ガイドブッシングの向きを確認します。(Italian規格には左右はありません)
  • 2. ガイドブッシングにグリスを塗布し、ボトムブラケットシェルに挿入します。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 3. 左ネジ(逆ネジ)のガイドブッシングを自転車のドライブ側(チェーンリング側)に挿入し、その反対側に右ネジ(正ネジ)のガイドブッシングをボトムブラケットシェル内部に隠れるまで挿入します。
  • 4. ガイドブッシングの挿入がスムーズにいかない場合、BFS-1 のハンドルにガイドブッシングを固定し、ねじ込んでいきます。
  • 5. BFS-1 のハンドルに切削油を十分に塗布したフェイスカッターを装着し、いずれからの方向からボトムブラケットシェルにハンドルを挿入します。反対側からワッシャー、スプリング、爪付きスペーサー、テンション調整ナットの順に取り付けます。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 6. ハンドルを時計方向に回転させ、フェイシングを開始します。最初は少ないテンションから始めていくと、スムーズできれいなフェイシングが可能です。適宜、テンションナットを調節しながら、ハンドルを回転させ、フェイシング作業を行います。
  • 7. 何回かハンドルを回転させた後、完全にフェイシングが完了するまで、フェイシング面を確認しながら作業を進めます。(フェイシング作業手順については、上記BTS-1の作業手順をご参照ください。)
  • 8. フェイシング作業完了後、細かなバリを取り除くため、調整ナットを緩めて、手の圧力だけでフェイシング面を軽くさらいます。
  • 9. 反対側も同様に作業します。
  • 10. 作業が終了したら、全てのガイドブッシングを取り外し、ボトムブラケットシェル内部に残った切りくずをブラシやウエスで除去します。適宜パーツクリーナーなどを使用して洗浄を行ってください。圧縮エアを使用して切りくずを吹き飛ばす場合は、周囲に十分注意してから行ってください。