タンデム車とは、複数のサドルとペダル（クランク）を装備し、複数人が前後に並んで同時に乗車する事が出来る特殊自転車です。
タンデム車で最も前方の乗員を「キャプテン」、それ以外の後方の乗員を「ストーカー」と呼び、一般的に全ての乗員のペダル（クランク）は、チェーンによって同期するように調整されています。
つまり、キャプテンの左側ペダルが12:00の位置にあれば、必然的にストーカーの左側ペダルも同じ位置になります。
また、キャプテンとストーカーのクランクは固定されたスプロケットで連動するように設計されているため、キャプテンがクランクを回すと、ストーカーのクランクも回る事になります。
一部、それぞれのクランクが独立して稼働するフリーシステムが存在しますが、本章では一般的な連動タイプのチェーンテンションの調整に焦点を絞って解説して行きます。

一般的なタンデム用フレームにおいては、キャプテン側のボトムブラケットにエキセントリックタイプを採用しています。
大き目なハンガー部の中に、ボトムブラケットパーツを取り付けるためのシェルが取り付けられています。
特徴的なのは、これらのシェルの中心を移動できるように設計されているため、ボトムブラケットパーツはシェルの真ん中に取り付きません。
これによって、ボトムブラケットのスピンドルの位置を移動させる事ができるため、チェーンテンションを調整できる事になります。

エキセントリックボトムブラケットシェルを固定する方法は、いくつか存在しますが、一般的にはハンガーの下側に割り入っており、ボルトによって固定されています。
それ以外では、斜臼を使用して固定するウェッジタイプと呼ばれる固定方法、あるいはシェルを直接ボルトを押しつける事で固定するタイプなどが存在します。

キャプテン側のエキセントリックハンガーシェルの固定を緩め、前後のチェーンリングが付いたクランク（左側）を6:00の位置で保持します。
この時、右側クランクを取り外してしまうと、自動的に左側クランクアームが6:00の位置に移動しますので、作業しやすくなります。

ピンスパナを使用してキャプテン側のエキセントリックハンガーシェルを回転させ、前後のスピンドルを結んだ直線が最も短くなる位置に移動させ、仮固定します。
自転車の左側から見ると、スピンドルの位置がちょうど3:00の位置になるはずです。

前後のチェーンリングの上方から、使用するチェーンを静かに掛けます。この時チェーンにたるみが出ないように注意してください。そのままチェーンリングを巻くように下側にチェーンを這わせ、ちょうど良い長さプラス1リンクを目安にチェーンの長さを決定します。
この時、エキセントリックハンガーシェルを動かさないように注意してください。

チェーンの切断、接続方法については、各チェーンメーカーの指示に従って取り付けます。取り付けたチェーンのテンションを調整する際は、仮固定したエキセントリックハンガーシェルを緩め、左右いずれかの方向にエキセントリックハンガーシェルをゆっくりと回転させる事で前後のスピンドル間の距離が変わり、チェーンテンションを調整する事が出来ます。

一般的に、チェーンの張り具合を判断する際には、下図のように取り付けられたチェーンの上側の中央部でチェーンを上下に移動させた量で確認します。チェーンの上下の移動量が1 / 2インチ（約12mm）程度であれば適切な範囲と考えられています。ただし、これらの数値は絶対的な数値ではありませんので、使用するフレームやスプロケット、チェーンによって誤差があります。