必要な工具
- ・リペアスタンド
- ・六角レンチ(8mm)
- ・コッタレスクランクレンチ(14mm、15mm)
- ・モンキーレンチ(300mm)
- ・コッタレスクランク
- ・ヤスリ、ケガキ
- ・金のこぎり、グラインダー
- ・グリス 、浸透性潤滑剤
- ・ウエス
ここでは、スクエアタイプのスピンドルを使用するクランクセットのクランクネジが破損した場合の取り外し方法について解説しています。
右図のように一般的なスクエアタイプのスピンドルを使用しているクランクを取り外す場合、M22サイズのネジが切られた部位にコッタレスクランクプーラーなどの専用工具を固定し、ネジの力でクランクをBBスピンドルから抜き取ります。
これらのネジには、クランクを引き抜くための大きな負荷が掛かりますが、機能上ネジ部を深く設計することができないことから、細かいピッチで、できるだけ多くのネジ山が掛かるように設計されています。
そのため、固着したクランクとスピンドルを引き抜く際、クランクのネジ山が耐えられずにネジを破損してしまったり、コッタレスクランクプーラーなどの専用工具を取り付ける際、クランクのネジ山を破損してしまうことがあります。
このような場合、以下の3つの状態によって、それぞれクランクを取り外す方法を選択しなければなりません。
原則的に、コッタレスクランクプーラーのような専用工具を使用して取り外す方法以外は、クランクの機能を著しく損傷させなければ取り外すことができません。
このような事にならないよう、クランクネジを損傷させることが無いよう、注意して作業することが大切です。
- 1. クランクネジの入口周辺のネジ山が破損しており、その奥ではネジ山が残っている状態。
- 2. クランクネジのネジ山が全体に渡り破損しているが、薄っすらとネジ山が残っている状態。
- 3. クランクネジのネジ山が全体に渡り破損しており、全く残っていない状態。
1の場合、コッタレスクランクプーラーを使用した一般的な方法でクランクを取り外すことができる可能性が極めて高いと言えます。
これらは、コッタレスクランクプーラーの取り付け時、クランクに対してアタッチメントを十分に奥までねじ込んでいなかったり、真っ直ぐにねじ込まなかったことによって、ネジ山を潰してしまった事により発生します。
このようなケースでは、破損した入口付近のネジ山の奥には正常なネジ山が存在するため、その部分を使用して作業を行うことになります。
まず、破損した入口付近をきれいにするため、破損したネジ山のバリや傷などをヤスリ、ケガキなどを使用して除去します。
次にコッタレスクランクプーラーのアタッチメントを真っ直ぐにねじ込みます。
この時、破損したネジ部ではアタッチメントの取り付けにある程度の抵抗が発生しますが、グリスや浸透性の潤滑剤を塗布し、スパナなどを使用してしっかりとねじ込んでいきます。
2の場合、コッタレスクランクプーラーを使用した一般的な方法でクランクを取り外すことができる可能性が低くなりますが、クランクを正常な状態で取り外すために、1と同様の方法で作業を行います。
一方、あまりにもネジ山の破損が激しい場合、ネジ山をある程度修正してから作業を行う事も考慮する必要があります。
一般的にネジ山の修正には切削用タップを使用しますが、クランクネジの構造上、適切なタップが存在しないため、右図のような簡易工具を使用することができます。
この簡易工具は、バイシクルリサーチ社から発売されている、クランクネジを簡易的に修正するものです。(TC-8)
TC-8は、切削用タップではなく、クランクネジを修正するアタッチメントとそのアタッチメントのセンタリングを行う2つの部品で構成されています。
この簡易工具をクランクネジにねじ込むことで、ある程度ネジ山を修正したのと同じ効果を得ることができます。
この作業後に、1と同様の作業を行い、クランクを引き抜きます。