ホーザン株式会社メインロゴ

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ヘッドチューブのフェイシングとリーミング

必要な工具

ここでは、フレームヘッドチューブのフェイシングとリーミング(内径の修正)について解説して行きます。

インテグラルタイプヘッドセットに関する詳細については、以下のページをご参照ください。

» Service of threadless headsets
» Cutting or sizing forks
» Machining the fork crown seat
» Headset types and nomenclature
» Installing threadless star-fangled nut

自転車のヘッドセットは、上下2つのベアリングとそれを保持するカップとコーン(玉押し)から成り立っています。これらのヘッドセットが正しく作動するためには、互いにフォークステアリングコラムに対して垂直、かつ平行に取り付けられていなければなりません。

そのためには、それらヘッドセットが取り付けられるヘッドチューブが、互いにフォークステアリングコラムに対して垂直、かつ平行になっていなければなりません。

フレームは、それぞれのパイプが溶接されていますので、製造時の熱などの要因によってわずかな歪みが発生します。そのため、ヘッドチューブの端面(フェイス)や内径を、適宜修正しなければならない場合があります。

フェイシング

ヘッドチューブの端面を切削加工する作業を「フェイシング」と呼びます。これらのフェイシング作業時に、正しく切削加工が行われているかどうかを確認しやすくするため、一般的にはペイントが用いられます。

新品の場合は、フレームに施された塗装をそのまま切削して行きますので、作業度合いがわかりやすいですが、すでに加工されている物などに関しては、新たにペイントマーカーなどでフェイス部に簡易的な塗装を施す事で、作業度合いの確認を容易にします。

このように、端面をヘッドチューブに対し完全に垂直の状態に加工する事で、ベアリングに対する不均等な荷重が発生せず、スムーズな回転を維持する事ができます。

右図では、時計の位置にしておよそ5時から6時の位置に当たる部分の塗装が残っています。また、切削時のバリが11時の当たりに残っています。

まず塗装がある部分は、他の部分より低い事が考えられますので、この塗装が完全に剥がれるまで更にフェイシング作業が必要な事を意味します。また、フェイシング作業を不十分な状態で終了させてしまったため、余分なバリが発生していますので、その部分は他の部分より高い事を意味します。

フェイシングを行う際には、このようなフェイスの不均等な状態を完全になくす必要があります。

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右図のヘッドチューブフェイスは、完全に垂直の状態に加工されています。

時計の位置にしておよび1時から2時の位置に当たる部分の塗装がわずかに残っていますが、ヘッドチューブの内側部(実際にヘッドカップが圧入され接触する部分)はフェイシングが完了しています。塗装が残っている部分は、フェイシングが完了している部分よりわずかに低い事を表しますが、このようなケースであれば、ヘッドセットに対する環境としては必要十分と言えます。

フェイシング作業の際、しばしばフェイスカッターが刃飛びしてしまったり、波を打ったような「チャッターマーク」が発生してしまう事があります。
これは、様々な要因が考えられます。

例えば、切削油の種類や量、作業速度やフェイスカッターにかけるプリロード圧はもちろん、作業するフレームの素材や塗装の量、厚みなどによって様々です。
そのため、できるだけ少しずつゆっくりと作業する事が望ましいと言えますが、一般的にこれらのチャッターマークは品質に大きな影響を与えないと言われています。

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リーミング

ベアリングが収まっているヘッドカップは、フレームのヘッドチューブに圧入されています。
ヘッドカップのフレーム挿入部は、ヘッドチューブの内径よりもわずかに大きめに設計されており、それぞれが嵌め合う形で保持させる仕組みです。

一般的に0.1~0.25mm以内であれば寸効公差範囲内と考える事ができますので、問題なく取り付ける事が出来ます。
しかしながら、ヘッドカップ側の外径とヘッドチューブ内径の差が0.3mm以上であれば、正しくヘッドカップを取り付ける事ができないだけでなく、ヘッドカップ、あるいはフレームを著しく損傷させる恐れがあります。

また、それらの差が0~0.05mm未満である場合、お互いに嵌め合う力が十分でない場合があります。
この場合、ヘッドチューブ側の内径を小さくする事はできませんので、ヘッドカップの外径寸法が大きめの物を探す必要があります。このような状態でヘッドカップを取り付けた場合、ヘッドカップにガタが発生し、ヘッドセットが正しく機能しないだけでなく、ヘッドカップとヘッドチューブの嵌め合い部がわずかに動くことによって、異音の原因となる場合があります。

HTR-1ヘッドチューブリーマ は、30.0mmリーマと4種類のアダプター(JIS、イタリアン、1-1 / 8”、1-1 / 4”)、およびそれらのヘッドチューブに対応するフェイスカッターと専用ハンドルが入り組みされています。

ヘッドチューブの内径を切削加工する必要が無い場合、アダプターを使用してリーマの代わりに取り付ける事でセンタリング出来る仕組みになっています。

左図は、ヘッドチューブ内径を調整する必要がある場合のセッティングです。
右図はフェイシングのみ行う場合のセッティングとなります。

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ヘッドチューブのリーミングとフェイシング作業手順

  • 1. ノギスを使用して、使用するヘッドカップのヘッドチューブ挿入部の外径、およびヘッドチューブの内径が寸法公差範囲内にあるか確認します。ヘッドチューブの内径を修正する必要がある場合、HTR-1 にフェイスカッターとリーマを取り付けます。ヘッドチューブ内径を修正する必要が無ければ、適切なサイズのアダプターをフェイスカッターと一緒に取り付けます。
  • 2. HTR-1 を静かにヘッドチューブに挿入します。
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  • 3. 下側からクイックリリースカートリッジを挿入し、テーパー部がしっかりとヘッドチューブ端面に嵌るように取り付け、リーマ、およびフェイスカッターにたっぷりと切削油を塗布します。
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  • 4. クイックリリースカートリッジを時計方向に回転させる事で、フェイスカッターに対してプリロードを発生させる事が出来ます。最初はあまり強いプリロードを掛けず、ガタが無い程度で作業しながら、徐々にプリロードを掛けていくようにします。目安としては最大でも3~4回転程度までとしましょう。
  • 5. 切削加工時は、油切れしないように切削油を足していきます。
  • 6. ハンドルをゆっくりと時計方向に回転させると、リーミング(ヘッドチューブ内部の修正)とフェイシングを同時に行っていきます。
    切削加工が行われる事で、カッターへのプリロードが変化して行きますので、適宜クイックリリースカートリッジを調整し、カッターへのプリロード圧を調整してください。
  • 7. 常に油切れしないように切削油のチェックを怠らないようにしてください。
  • 8. ヘッドチューブの端面が全周に渡りきれいにフェイシング出来るまで、確認を行いながら作業を続けます。
  • 9. 最終的に作業が完了する時点で、カッターへのプリロードが無くなるようにコントロールして行くことが理想的と言えます。プリロードが掛かった状態でクイックリリースカートリッジを取り外すと、フェイシング部にバリが残ったり、正しい状態で作業を終了する事ができません。
    作業の最後は、ハンドルにガタが無く、カッターへのプリロードが限りなくゼロに近い状態を保ちつつ、クイックリリースカートリッジを取り外す際もハンドルを時計方向に回し続けながらハンドルを引き上げると、作業面が大変きれいに仕上がります。
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  • 10. 作業が終了したら、反対側も同様に作業します。
  • 11. 常に油切れしないように切削油のチェックを怠らないようにしてください。
  • 12. リーミングとフェイシングが終了したヘッドチューブの端面は、非常に鋭利な状態になっていますので十分に注意が必要です。適宜、ヘッドチューブ内径の面取りを行ってください。
  • 13. 全ての作業が終了したら、フレームやカッターなどに付着した切削粉や切削油などを除去します。
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ヘッドカップの一部には、ヘッドチューブ挿入部が大変長いものが存在しています。これらのヘッドセットを使用する場合は、ヘッドチューブ側もそれに対応したものが前提となりますが、HTR-1 のリーマだけでは十分に切削加工を行う事ができません。

そのため、下図のように769 Head Tube Reamer Extensionなどのアダプターを併用し、作業する必要があります。

注意:全ての切削工具は著しく消耗するため、再研磨が必要になります。金属で金属を切削している以上、カッターの消耗は想像をはるかに上回ります。作業者の技術レベルや使用環境、切削するフレームの素材、切削油のタイプや量など様々な要素によって、カッターの消耗度には差が生じます。
しかしながら、必ず消耗して行くカッターは、最低でも1年に1度は状態を確認し、適宜再研磨をおこなう必要があります。

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インテグラルタイプの切削加工

ヘッドカップを必要としない「インテグラルタイプ」と呼ばれる規格は、従来の規格とは全く異なります。

756-Sヘッドチューブリーマー & フェースカッターは、このようなインテグラルタイプヘッドシステムの標準的な規格となっている「Cane Creek規格」に準拠しています。同規格では、ベアリングが収まる座面の角度が45°、またベアリング外径が41mmとなっています。この規格に準拠しないその他のインテグラルタイプヘッドシステムには、絶対に使用しないでください。

756-Sヘッドチューブリーマー & フェースカッターは、上下一組で構成されています。それぞのカッターは同じように見受けられますが、カッターの高さが低いものがヘッドチューブの上側用になっており、ヘッドチューブの下側は、より深い切削加工ができるよう、カッターの高さが異なっています。これらのカッターは、それぞれの作業を行う際、一つずつHTR-1 に取り付けて作業します。

注意:切削加工を行う際、ハンドルなどがフレームと干渉しないように注意してください。

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作業を行う前に、切削加工を行う必要があるかどうか確認します。これは、インテグラルタイプヘッドシステムが、ヘッドカップを必要としない点に起因しますが、切削加工を行った場合、作業に失敗があるとフレームが使用できなってしまう事になります。そのため、作業前の切削加工の必要性の確認は十分に行ってください。

まず、使用するベアリングをヘッドチューブ内に装着します。両手の親指を使用して、ベアリングを上下左右あらゆる方向に押したり、ベアリングを回転させる事で、ヘッドチューブとベアリングの公差を確認する事が出来ます。ガタや引っかかり、あるいは装着したベアリングの回転が著しく重いなどの不具合がある場合、これらの切削工具を使用して修正を行ってください。

注意:これらの切削加工は、フレームメーカーによっては保証対象外となる場合があります。状況を十分に判断し、加工の必要性がある場合、フレームメーカーに加工の可否について確認する事をお勧めします。

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