トラブルシューティング(ドライブトレインの異音)
ここでは、ドライブトレインからの異音に対してのトラブルシューティングついて解説しています。
きしみ音やキーキーとった異音は、深刻なトラブルの兆候を知らせてくれる重要なものから、機能上の問題とならないものまで様々です。前者であれば、それを見逃すことによって重大なトラブルに発展することがあり、また後者であれば、ライダーへの心理的なストレスを高めてしまう恐れがあります。
これらの異音の原因多くは、嵌め合う複数の部品がお互いにこすれ合うことで発生します。またこれらの異音を解決する方法の一つに、確実な締め付けトルクの管理が挙げられるでしょう。
異音の原因を正しく診断することは大変高度な技術でもあります。ご自身でそれらを診断することができない場合は、最寄りの販売店にご相談ください。また、複数人で診断をする方法も考えられます。例えばご友人に各部品を動作してもらう間に、ご自身でその異音の原因を診断することができるかも知れません。
走行中、周期的な異音を感じることができる場合、その原因の多くはクランクセットやボトムブラケット、ペダル周辺の部品が考えられます。また、連続的に発生する異音であれば、チェーンやディレーラー、スプロケットなどに原因があると考えられます。
このように、一つの異音に対して、その原因を追究する際には、段階的に一つ一つの部品の状況を丹念に追及していかなければ、本質的な原因を診断することができません。
この章では、いくつかの代表的な異音の原因と対応方法についてご説明します。
目次▼
クランクセット
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チェーンリング
チェーンリングはチェーンリングボルト(5ピン)を使用してクランクアームに固定されています。一般的には六角レンチを使用して締め付けを行いますが、一部トルクスレンチが必要なチェーンリングボルトもありますので、ご使用になるものに適した工具を使用して適正トルクで締め付けを行います。
万一、裏側にあるナットが共回りしてしまう場合は、ParkTool CNW-2 チェーンリングナットレンチ などを使用します。また、適切なトルクを維持するために、スレッドコンパウンドやグリスをネジ部に塗布してから作業することも大変重要です。
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ペダルクリート
見逃しやすい原因の一つとして、クリップレスペダルに対応したシューズに取り付ける専用クリートの緩みが挙げられます。
定期的に取り付けボルトの締め付けトルクを点検し、適宜スレッドコンパウンドやグリスをネジ部に塗布し、適正トルクで締めつけてください。
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ペダル
最初に確認すべき点は、クランクアームとペダルの締め付けです。
ペダル周辺からの定期的な異音の多くは、ペダルベアリングや玉押しの緩みが考えられます。使用するペダル毎に専用工具がありますので、それらを使用して適正トルクで増し締めを行ってください。またペダルベアリングの消耗や破損などが認められる場合は、適宜交換を行ってください。
ペダル関連の詳細については、以下のページをご参照ください。
» Pedal Installation
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スパイダーアーム
いくつかのクランクセットに採用されている交換式のスパイダーアームは、時として異音の原因となります。クランクアームの裏側に取り付けられ、ロックリングで固定されていますが、これらのロックリングが緩むことで、ズレを発生し異音の原因となります。
一般的なロックリングはParkTool BBT-18 ボトムブラケットツール を使用して作業することができます。
ロックリングを取り外し、適宜ロックタイトやスレッドコンパウンド、グリスなどを塗布し、適正トルクで締めつけてください。
クランクセット関連の詳細については、以下のページをご参照ください。
» Chainring Cassette Installation
ボトムブラケット
ボトムブラケットの緩みは、最も代表的な異音の原因と考えられます。多くのフレームはネジでボトムブラケットを固定する方法を採用しています。これらのネジの緩みやガタの発生を抑制することで異音を止めることができる場合があります。
まずは、フレームのボトムブラケットシェル内部のネジの状態を確認します。万一、十分な状態でない場合は、ParkTool BTS-1 BBタップセット を使用し、ネジの修正を行ってください。次にボトムブラケットのベアリングカップのネジを確認し、不十分である場合は ボトムブラケットを新しいものに交換します。
取り付けるボトムブラケットのベアリングカップのネジ部にスレッドコンパウンドやグリスを塗布し、ボトムブラケットシェルに適正トルクで締めつけます。また、カートリッジタイプのボトムブラケットの場合、左側ベアリングカップの内側に薄くグリスを塗布することで異音を止めることができる場合があります。
ボトムブラケット関連の詳細については、以下のページをご参照ください。
» アジャスタブルタイプ(カップ & コーン式)ボトムブラケットの調整
» カートリッジベアリングタイプボトムブラケットの着脱
チェーン
まずは、チェーンをきれいに洗浄します。ParkTool CM-5.2 サイクロン は、手を汚さずに簡単にチェーンの洗浄が可能です。
チェーンの各プレートをチェックし、曲がり、折れなどの破損、およびリンクピンが外れかかっていないかなどの確認を行います。次に、チェーンの伸びを確認します。ParkTool CC-3.2 は、簡単にチェーンの消耗度を確認することができます。これらの確認の結果、適宜チェーンを交換します。
しばしば、チェーンプレートとリンクピンの接合不良などに起因し、リンクの動きが渋いものが見受けられますが、これらの動作不良を起こしているチェーンは変速不良やチェーンの脱落、異音などの原因になります。
また、定期的にチェーンへの注油を行うことで、変速不良や異音の発生を抑制することができます。
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リアディレーラープーリー
チェーンと共に常に回転しているリアディレーラープーリーには多くの負荷が発生しています。定期的に洗浄を行い、ベアリング部への注油を行ってください。
また、多くは樹脂で成形されているため、使用頻度によってはプーリーにひびが発生したり、破断することがあります。その際は、リアディレーラー毎に指定された専用のプーリーに交換してください。
ホイール、スポーク
スポークの緩みにより、交差部のずれなどで発生する異音も考えられます。スポークの緩みはニップルの締めこみにより、スポークテンションを調整します。稀に、リムの接合部のずれによって異音が発生することも考えられます。
ホイール関連の詳細については、以下のページをご参照ください。
» Wheel Truing
ケーブルアウター、エンドキャップ
ハンドルを操作した時に発生する異音は、ケーブルアウターやエンドキャップに起因するものと考えることができます。ケーブルアウター同士がこすれ合って発生する場合や、フレームのアウター受け部とエンドキャップのずれによって発生するきしみ音なども考えられます。
ケーブルアウター同士がこすれ合っている場合は、その部分を防護チューブで覆ったり、ケーブルルーティングを見直したりすることで解決できます。
また、アウター受けとエンドキャップのずれには、グリスなどの潤滑剤を薄く塗布することで異音を抑制することができます。
フレーム
ドライブトレイン以外の異音が、ドライブトレイン部を通じて異音として発生することも考えられます。もちろんその逆も考えられます。
ドライブトレイン部で考えられる原因を追及しても問題が解決できない場合は、その他の部品を確認する必要があります。これが、異音の原因追及の難しい部分と言えます。
特にフレームの溶接部に関しては、クラックの発生がないか注意深く確認することが必要です。その状態によっては、乗車し続けることで重大な事故に発生する可能性があります。必要に応じて、最寄りの販売店に相談し、プロメカニックのチェックを受けてください。
- リアドロップアウトエンドの破損例
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- シートチューブのクラック例
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- カーボンフレームのボトムブラケットシェル部の破損例
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- フロントフォーククラウンの破損例
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サドル、シートポスト
サドル固定ボルトの緩みにより、サドルレールとやぐらにずれが生じて異音が発生する場合があります。サドル固定ボルトを適正トルクで増し締めしてください。また、サドルレールとベースの消耗や不良によって発生する異音も考えられます。
それ以外には、フレームとシートポストとの相性や適切なサイズを使用していないことによるずれなどによって異音が発生する場合があります。また、適切なフレームサイズを使用していないことにより、長すぎるシートポストを使用している場合、シートチューブとシートポストがひずみ、ずれることで異音が発生することも考えられます。
ヘッドセット
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ステム、ハンドルバー
ハンドル固定ボルト、ステム固定ボルトの緩みは異音の発生に直結します。確実な締め付けトルクを発生させるために、それぞれのボルトにはスレッドコンパウンドやグリスを使用して作業することをお勧めします。
右記の画像のように、継ぎ手を使用して中央部とハンドル部の直径を変えているハンドルの場合、接合部のずれや緩みなどから異音が発生する場合があります。その際の解決方法はハンドルの交換のみとなります。
また、画像のようにステムクランプ内部でクラックが発生している場合も考えられます。ハンドルには過大な負荷が常に掛けられていますので、定期的に状態を確認することをお勧めします。
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リアスプロケット
カセット式スプロケットの場合、ロックリングの緩みが最も大きな異音の原因となります。またフリーホイール式の場合も同様にスプロケットの緩みが考えられます。
また定期的に、スプロケットの歯の状態を確認して、消耗があるようであれば適宜交換してください。
リアスプロケット関連の詳細については、以下のページをご参照ください。
» カセットスプロケット & フリーホイールの着脱